バイトの行き帰りの道は緑が多くて好きだなと思う。雨が降っていた今日は深緑が一層映えている。土の匂いがほのかにかおる場所もある。人通りも少ない。雨音も心地良い。一方で自宅の部屋に居る時は向かいのアパートのトタンに当たる音を不快に感じる。4月に入って同じアパートの住人がバイクを買ったようで、それが出入りする時のエンジン音も不快に感じるし、はす向かいの施設が定期的に団体を迎え入れる時があり、その時に車を呼び込む男性の声出しも不快に感じてしまう。昨年の秋口、家の前のマンホールが壊れ、車が通るたびに大きな音が鳴るようになった。電話をして修理はしてもらえたのだけど、以来、車が通る音に意識が向くようになってしまい、修理されたマンホールとは別の、その一つ隣にあるマンホールを車が走り抜ける際の段差音が気になるようになってしまった。人為を嫌悪しているのか。決まってそれが起こることを予測できることが不快なのか。「コインロッカーのご利用宜しいですか?って聞いたらああ別にいいですって絶対なるんでもっと促すように言ってもらっていいですか?」おそらく同期入社だけど名前は知らないその人から、いつものように語気強めにそう言われた僕は首を傾げて「うーん」としか言えなかった。そうしている間にまた次の客が来る。展示作品への接触を避けることが看視の人達の役目であることは分かりつつ、バックパックをロッカーに入れるか前掛けにするのかは客が決断するものだと思ってしまい、僕はまた同じ文言で案内をはじめつつ、辞めたい気持ちはまたすこし増したのだった。昨日のトークの打ち上げの時にもらった紙袋の中を見たら、二人のZINEと菓子折りだけでなく謝礼も入っていて、そのままあおむけになりしばらく天井を見つめた。二人に連絡しないとと思いつつ、昨日の収録もまだ聴き返せてないことに加えて、この謝礼については気持ちも含めて感謝しつつ、どう応えれば良いのかという迷いが自分をスマホから遠ざけた。しかしこの最近は気持ちがずっと虚ろだ。三寒四温の気候や花粉、黄砂のせいもあるのだとは思う。