Birdie Photo Galleryにてカマウチヒデキ写真展#3「Book of Monochrome」

神戸本町Birdie Photo Galleryにてカマウチヒデキ写真展#3「Book of Monochrome」。路頭でのスナップを中心に構成されていてその名の通りモノクロの展示。展示のテーマ(”ノスタルジー”のこと)と、一部かなり前に撮られたものであるのを知ってる写真もあったので、展示全体の撮影期間の範囲はかなり広そうなことを察する。でももし本当にそうならその撮影期間に比例したスケール感(集大成感?)があってもいいはずなのに、それは感じない。ここで言う”スケール感”を構成する要素には一つ、時間軸の連なりがあるのだと思うけど、通常、連なって縦に高くそびえ立っていくはずのそれは小口切りで均等に解体されてるかのよう。写真の「流れ」を注意深く回避されてるようにも思えて、写真個々とそれを通した全体像へ意識が傾く。

例外は勿論あるだろうけど、長年写真を撮っていればその時々で思想やテンションは多少なりとも違ってるものだと思う。写真をまとめる時にはそういった意識面が基準になることは多いし、だから過去の写真と今の写真をまとめられないことも多いのだと思う。今回のこの”均等に切り分けられた写真群”にも、それぞれその時々の思想・テンションがやっぱり含まれてるから本来、一皿の器に盛りつけるのは不可能なことのように思える。

今回の展示は、そもそもそれとは別次元に「モノクローム」という判断基準を設けることで、思想やテンションといった”ノスタルジー”という束縛から逃れ、あらたな世界を編むという、実はわりとシンプルな試みだったとも言えるのかもしれない。ただその個々の写真に含まれる経験値に比例して、完成系へもっていくことは間違いなく難しくなる。多種多様な生態をもった厳かな生き物達をひとつの動物園におさめるようなもので、そこには専門的な知識は勿論、相当に綿密な立案が求められる。

カマウチさんは見事にそれを成し遂げてるように僕は感じて、結果、本来集結するはずのなかった個々が、モノクロームという共同体のなかで、まるで新生活をはじめているかのようだった。再度生を与えられた個々はそれぞれが干渉することなく自由に息づいていて、その光景は真新しく奇妙でとても感銘を受ける。