橋本大和さんの作品を購入

先日ギャラリーソラリスで開催されていた展覧会で、橋本大和さんの作品を購入。展示されていた作品は、全体的に興味をそそられるものばかりだった。中でもこの一枚は、まずイメージの鮮烈さに惹かれた。その形象と色彩の組み合わせと佇まいから、まるで異様な生き物(まるで深海でゆらゆらとゆらめいてそうな)のように感じられるところ。実際にそれは、頭の無いマネキンに飾られた仮面と孔雀の羽なのだけど、だからといって不可解さが残る。そこにあたっている光がまたとてもきれい。相まってか、どこか感じるノスタルジックな空気も良い。

ここまでなら、ほかにも同じくらい魅力を感じる作品が多くあった。他の写真とこの一枚の大きな違いは、撮影者自身も写っているというところ。ディスプレイされた対象とカメラとを隔たるガラスに、カメラを縦位置に構える橋本さんの姿がみえる。それは「誰かがいまこれを写した」ということが写っているということ。

はじめに展示で見た時にはこの映り込みに気付いてなくて、二回目に気付いたのだけど、その瞬間に今までには感じたことがない類の「ビビビッ」が起きた。それまでは「良い」と感じていた。その「良い」という答えが成立していた頭の中の数式に、ビビビッと変数「x」が出現したことで、瞬間に答えが「?」になった感じ。分かっていたものが分からなくなった。その要因になる「x」という謎に対する興味が決め手になった。

作品というものを買ったことは、過去に震災があった時、チャリティー展で出されていた安価なものを購入したぐらい(それもとても気に入っていてずっと飾っている)。だから今回買う時は、価格的にもちょっと緊張したところがあった。それでも、世の中で流通している「作品」、少なくとも若手というカテゴリからみた価格帯を大体ながら把握していたし、小山登美夫さんの本を読んだことも手伝って購入に踏み切れたのだと思う。「作品を買う」ということ自体への興味がずっとあったし、ある方へのご恩のことが強く後押しにもなっている。

これが五年前の自分だったら、買わなかった(買えなかった)だろうと思うけど今は感覚も変わったということなんだと思う。けれど変わる前の感覚も大事に忘れないようにして、一方的にならないようにしながら作品というものの価値を考えることも続けていきたいです。